熟成肉という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃると思いますが、土佐あかうし協会では、お肉をもっと美味しくする熟成肉に着目して、土佐あかうしの熟成加工に取り組んできました。
熟成により生まれた「土佐熟成あかうし」がどういったお肉で、どのような美味しさがあるのかをご紹介したいと思います。
お肉を美味しくする熟成肉とは
2014年頃から日本に持ち込まれ、その美味しさからブームになった「熟成肉」。
そもそも熟成肉はどういったもので、なぜ美味しくなるのでしょうか。
また、土佐熟成あかうしは「ウェットエイジング」という熟成方法をとっていますが、それがどんなものか説明していきます。
お肉を美味しくする熟成方法
熟成肉とは、一定期間低温で貯蔵することにより、タンパク質が分解されて肉質が柔らかくなり、旨味が増したお肉です。
熟成の仕組み
一定期間温度・湿度を適正に管理して貯蔵し熟成させることにより、肉質はやわらかく、旨味が増加して美味しい状態になります。
適正な環境で管理して貯蔵することにより、お肉に含まれる酵素の働きによってタンパク質が分解され、旨味のもとであるアミノ酸やグルタミン酸、ペプチドなどが増え、お肉の旨味が濃く、美味しく感じられるようになります。 また、酵素は、筋繊維や結合組織(コラーゲン)を分解し、それにより筋繊維がほどけ肉質が柔らかくなります。
熟成方法
代表的な熟成方法には「ドライエイジング」「ウェットエイジング」の2つがあり、土佐熟成あかうしでは「ウェットエイジング」を採用しています。
ウェットエイジングはドライエイジングに比べて水分があまり失われないため、肉の質量が減少せず、製造の出来高も減らないので、値段が上がりにくくなります。
また、管理方法でみると風をあてるドライエイジングに比べて管理しやすい方法ではありますが、ドライエイジングに比べて熟成が進みにくいため出来上がりまでに時間がかかります。
“熟成”と“腐敗”は別物
「お肉は腐りかけが旨い」という言葉もありますが、熟成は腐敗とはまったくの別物です。
熟成は、タンパク質を旨味に変える菌の働きを促します。一方で腐敗は、一部の菌が人体に有害な影響を与える変化を起こしてしまいます。
熟成の工程では「温度」や「湿度」、「衛生状態」など厳密で適切に管理されているため、腐敗にあたる変化は抑えられています。
土佐あかうしをさらに美味しくした「土佐熟成あかうし」
土佐あかうしを「ただ熟成させたお肉」ではなく、確かな品質と美味しさをもった「土佐熟成あかうし」として提供するために、取り組んでいることがあります。
熟成による、土佐あかうしの美味しい変化とは
熟成によって、土佐あかうしのお肉にどのような変化が起こり美味しくなっているのか。
社団法人高知県畜産会さんの資料(土佐あかうしものがたり)に、成分比較の結果が記されています。
注目いただきたいのは左側、熟成後の土佐あかうしと黒毛和牛の成分比較です。
熟成させた土佐あかうしは平均的な黒毛和牛と比べて、旨味が2~4倍にまで上昇しています。
旨味や甘味を感じるグルタミン酸などのアミノ酸が増加し、熟成期間によってはさらに上昇しているのがわかります。
※グルタミン酸:アミノ酸の1つであり、昆布などに含まれる旨味成分。
©社団法人高知県畜産会
熟成による成分変化が「土佐熟成あかうし」の旨味の濃さ・美味しさの秘密と言えます。
「土佐熟成あかうし」の始まり
旨味が多く、お肉本来の味が濃い土佐あかうしを、もっと美味しく提供するため、土佐あかうし協会では地元の老舗焼肉店の協力のもと、2021年から土佐あかうしの熟成加工に取り組み、お店などで提供を行ってきました。熟成期間は3~5ヶ月(一部の部位を除く)と長期の熟成をかけています。
そして、実際に食べた人からその旨味と味の濃さ、肉質のやわらかさに驚き、美味しいという感想をいただいています。
「土佐熟成あかうし」と呼び始めたのは最近ですが、確かな手ごたえを感じながら、研鑽を積んできました。