土佐あかうしは高知県内の生産者に大事に育てられます
土佐あかうしは高知でのみ育てられる高知にしかない和牛ブランド。土佐あかうしが「幻の和牛」といわれるようになった理由、土佐あかうしがどうして美味しいのか、土佐あかうしはどういう経路を辿って今に至るのかを豆知識も含めて解説します。
土佐あかうしのルックスが良すぎるという噂のワケとは?
「土佐あかうし」は和牛の品種でいうと褐毛和種になります。毛色が茶色っぽいのが特徴の和牛ですが、この褐毛和種の主産地は熊本県と高知県になっています。どちらも長い歴史の中で改良をしてきているので血統も異なっていて見た目も違うため「熊本系」「高知系」と区別しています。現在は、北海道や東北、近畿地方などでも飼育されています。熊本系は全身が褐色なのに対し、高知で育った高知系は特定の部位(角、鼻、下、目の周り、しっぽ、足先)が黒い色になっているのが特徴です。
ツートーンでポイントが黒になっているので全体が一色よりも引き締まって見えます。特に目の周りがアイラインを引いたように黒で彩られて、まつ毛が長く、鼻が黒なので余計に可愛く見えるのかもしれません。全体の色が一色なものを「一毛(ひとけ)」そうでないものを「毛分け(けわけ)」と言われます。高知土佐あかうしは2色なので毛分け和牛です。
毛分けは目の周り、鼻などが他の部位と色が違うものを指しますが、高知のほぼ全ての土佐あかうしは毛分けです。その理由は和牛は長い歴史の中で改良を繰り返すことが関係しています。高知県では土佐あかうしの中でも毛分けのほうが、機敏、能力が高い、品位がある、肉の質が良いという事に気づき毛分けを優先して交配して改良してきたため今では高知の土佐あかうしのほとんどが毛分けになったということです。
土佐あかうしの肉は本当に美味しいと化学的に証明されている
土佐あかうしは赤身が美味いとか、全体の脂の質が良いという事を耳にしますが実は化学的にも証明されています。どういう仕組みで赤身が美味しいと感じるかは成分に秘密があります。大量に流通している黒毛和牛と比較すると、旨味、甘みを感じる元となるアミノ酸を調べると、甘みを感じるアミノ酸が土佐あかうしは黒毛和牛の2倍以上となっています。
更に土佐あかうしの肉は加工されてその場で食べる事は少なくプロが適切な環境で熟成をして出荷するか飲食店で提供されていますが、アミノ酸の量は熟成することで3倍~4倍に増加することが分かっています。土佐あかうしの赤身が美味しいという評価は成分レベルで違いがあるという事になりますね。
どうして全国どこでも食べる事ができないの?
土佐あかうしは現状は僅かながら生産量は上がっていますが和牛全体からすれば非常に少ない出荷数です。平成26年前後が最も頭数が減った時期で、年間1,600頭以下だったものがその後徐々に回復し、令和5年には年間2,400頭以上に増えています。これは高知県が増産の為に多くの施策を出して実行したからですがそれでもまだ土佐あかうしの生産出荷数が少ないので多くの肉を流通させるまでに至っていません。この点を当協会でも増加させる事に協力できればと考えています。
土佐あかうしの状況と、生産者を支える取り組み
高知県は最盛期であった昭和30年代に約4万頭だった土佐あかうし年間出荷量が平成初期には8千頭になり、平成25年度になると1600頭まで落ち込んだ事を受けて様々な対策を講じてきました。種牛改良策、レンタル牛舎をはじめ多くの施策を行い現在は徐々に出荷数は増え、出荷価格も上がっていますがそれでも根本解決にはまだ遠く生産者数は増加していないのが実情です。
特に若い年代の生産者数が非常に少ない状況で、現在の土佐あかうしの多くは高齢者世帯となっているため現在稼働している生産者が廃業すれば後を継ぐ人材がいない事もあり、土佐あかうしの需要が増加しても生産面で不安を抱えています。土佐あかうしの価格が上がり、消費者から求められて生産者の賃金が増えるなど環境改善がされていけば後継者、新規生産参加者も増えていく事でしょう。
畜産業に限らず、農業の世界では高齢の方の離農で生産者の減少は避けられない流れではあります。その分、後継者を増やしていくことにより、生産基盤を確保していかなければなりません。若い生産者を応援するためにできることはないでしょうか。
行政組織や会社・団体の取り組み以外でも、私たちは消費者として商品やサービスの購入を通じて生産者を応援することも可能です。
生産者だけでなく周りの取り組みによっても若い生産者が参入することを応援し、それにより土佐あかうしの頭数が増加に繋がれば…と土佐あかうし協会は考えています。
高知(土佐)生まれ高知育ちの土佐あかうし
土佐あかうしは高知で生まれて高知で育ちます。土佐=高知のあかうしです。全国に飼育される和牛は177万頭とされますが土佐あかうしはそのうちの2,400頭(令和5年度)にすぎません。更に出荷されているのはそのうちのわずか600頭未満なので、市場には土佐あかうしが中々流通しないのです。健康ブームが日本中に巻き起こり脂身の多いコッテリしたお肉よりも赤身が美味しく、脂身バランスが良い土佐あかうしが注目されても、土佐あかうしのお肉を全国に大量に出荷できないのも「幻」と言わせる所以です。
大量生産できれば良いですが、そう簡単ではありません。土佐あかうしは非常に手間のかかる飼育をして肉質を良くする努力をしている生産者ばかりです。子牛として育て始めて出荷するまでに2年半以上かかるのです。大変美味しいと土佐あかうしの評価が上がる一方で生産の問題を解決しなければなりません。土佐あかうし協会も少しでもお力になることを願って存在しています。
高知県WEB参考資料:高知県農業振興課|高知県畜産試験場|高知県畜産会
高知県WEB参考:高知県農業振興部畜産振興課