『幻の和牛』土佐あかうしの歴史について

土佐あかうしとは?

 

幻の和牛」と称される土佐あかうしは、その出荷頭数が少ないことから”幻”という所以がついています。日本の肉用牛である和牛4品種(黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種)のうち、高知県内でしか改良されていない褐毛和種(あかげわしゅ)。褐毛和種は熊本系高知系の2系統に分かれており、前者は北海道などでも肥育されていますが後者は高知県のみでしか肥育されていません。その為、土佐あかうしは年間300~400頭しか出荷されていない貴重な品種となっています。高知県内では土佐褐毛牛とも呼ばれており、公益社団法人全国和牛協会が行う子牛登記並びに血統登録事業によって一頭一頭が血糖管理されています。特に牛肉流通においては高知県産褐毛和種として土佐和牛「土佐あかうし」で流通しています。

 

土佐あかうしの特徴

土佐あかうしの歴史

褐毛和種には熊本系と高知系の2系統に分かれていますが毛色において特徴が異なります。[熊本系の褐毛和種は全体的に黄褐色が強い体毛をしているのが特徴なのに対し、土佐あかうしは目の周囲や鼻先、口元や蹄・角先、しっぽなどが黒いことが特徴でありチャームポイントとなっています。この黒色を持つ和牛は肉質も良く農家から好まれており、昔から「毛分け」(けわけ)と呼ばれ珍重されていました。その愛くるしい表情と被毛は、草地での放牧風景でも癒しを与えてくれます。お肉はしっかりと28ケ月齢程度まで肥育されることで赤身に旨味を蓄え、霜降りは入り過ぎず、適度な量であることから旨みとジューシーさを兼ね備えています。また、冷めてからもベタつかない特徴を活かしフレンチやイタリアンでも和食文化の食材として高く評価されています。

 

土佐あかうし 普通の和牛
「サシ」ではなく、「肉」全部がうまい サシ(脂)が特徴で、こってりした味わい
しみ出すのはうま味が濃く甘みもある「肉汁」 しみ出すのはジューシーな脂

 

一般的な和牛は比較的狭い牛舎で育てられる事で運動しにくい環境で健康管理の為に薬剤を投与されることもあります。対して土佐あかうしの多くは高知の広い土地で放牧されているものが多く自由に運動できる環境で育っています。薬剤を使わないで育てやすいです。

 

土佐あかうしの歴史

土佐あかうしの歴史

明治時代のなかばから九州方面より移入された褐毛の牛は、性質温順しかも動作機敏、暑さ、粗食に耐え、使役牛として在来牛に遙かに勝るということで、本県の水稲二期作地帯の農家は競って飼養しはじめました。元は「朝鮮牛」の血統が強く、一時は黒毛和種のように外国種(シンメンタールやブラウンスイス)を改良用(体を大きくするため)に交配していましたが、農耕用に利用するための性質のおとなしさ、小回りの良さなどの美点が失われるため、熊本・高知それぞれで「褐毛和種」の改良と固定を進めた結果高知系は朝鮮牛の血統が濃くなり、全体の毛色や「毛分け」と呼ばれる特徴的な黒毛部分があるなど、熊本系とは異なる系統となっています。

 

改良について

土佐あかうしの改良

土佐あかうしの特徴を生かした品種化のため、大正7年の畜牛改良30年計画により、県内の集団内の牛から優秀な個体を選抜するという閉鎖育種の手法で改良がすすめられました。そして昭和19年に「褐毛和種」として認定されました。(「黒毛和種」「無角和種」も昭和19年に認定。「日本短角種」は昭和20年に認定。)昭和30年代後半以降は、和牛の価値がそれまでの使役用から肉用へと転換したことから、次第に産肉能力を主体とした改良がすすめられており、現在の土佐あかうしができあがりました。

 

土佐あかうしの流通

土佐あかうしの流通

土佐あかうしの年間出荷量は約470頭。これは和牛生産量の0.1%しかありません。(平成30年度 高知県畜産振興課調べ)高知でしか生産されていない貴重で特徴ある牛肉のPRのため、平成21年に土佐和牛ブランド推進協議会により「土佐あかうし」ブランドが立ち上がりました。高知県の和牛ブランド“土佐和牛”のうち、高知うまれ高知そだちの土佐褐毛牛は“土佐和牛「土佐あかうし」”として流通されています。(一部では「土佐あかうし嶺北ビーフ」としても流通しています)近年、「赤身肉」ブームとして注目をあび、頭数も増頭傾向となってきておりますが、そもそもの頭数の少なさは改善されておりません。しかしながら、そのぶん1頭1頭の血統情報の管理や、飼養管理面での指導など、きめ細かい目線が行き届くことから、県内の生産者とともに安全・安心な和牛生産を推進しています。

 

土佐あかうしの歴史まとめ

土佐あかうし歴史まとめ

 

出荷数が少ないことから、入手が難しい品種であり、その希少性から高価格で取引されることが多く、一般的な肉屋やスーパーマーケットでは入手が難しいことが多いのが現状です。その独自の肉質や味わい、そして文化的・歴史的背景を守りたいという思いがあり国や県も支援してくれています。土佐あかうしは、長い歴史を持ち、古くから高級食材として珍重されてきました。その味わいや食感、そして希少性から、多くの人々に愛されています。また、土佐あかうしを飼育する酪農家や関連業者にとっても、地元産業の活性化や雇用の維持につながる重要な存在です。土佐あかうしは、地元高知の人々にとっても、長い間愛されてきた大切な存在であり、その文化や歴史的背景を継承することは、地域のアイデンティティを守ることにつながります。

 

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