土佐あかうしに情熱を注ぐ田野町の生産者・池地さん
高知県でしか育てられていない土佐あかうしの生産者を訪ねるシリーズ第二弾は、高知県東部「田野町」でご夫婦二人で運営しておられる生産者様「池地」さんです。牛を育てる牛舎は田野町を流れる鮎で有名な安田川近くの丘の上にあります。
土佐あかうしに「本気」で向き合う職人気質のこだわり
牛舎に到着すると笑顔で迎えてくれた池地さんご夫婦。まず到着して感じたのが牛舎の「匂い」でした。牛舎は糞の匂いがしているものだと思っていましたが池地さんの牛舎では嫌な匂いがほとんど無く無臭でした。
池地さんは牛舎の衛生にこだわっていて常に清潔になるように掃除をしているそうです。生まれて間もない子牛と母牛が快適そうに過ごしているのが印象的でした。常に床を綺麗にしているので牛が寝そべっても汚れず病気の防止にもなっています。土佐あかうしの生活環境を清潔にするのは労力もいるし生活時間を削られるので大変だとの事でしたが牛が病気になったら余計に労力も時間も必要になるので常に清潔にしておくほうが良いと池地さん。
飼料に関しても拘りがあり、「健康第一」で考えており自前の無農薬牧草、安心安全な飼料を独自に配合をして与えています。土佐あかうしに対して愛情を持って大事に育てているのが伝わってきます。安全な餌と環境で育った土佐あかうしは消費者側から見ても安心です。
牛200頭を夫婦2人で365日世話し続ける
池地さんの牛舎は200頭近くの牛を育てており、1人で100頭ずつ毎日世話をしている事になります。牛舎の掃除、食べ物、子牛の世話や時に出産が重なる事もあるそうですが、それでも子供のように可愛いと話す池地さんは非常にパワフルで年齢を感じさせません「自分たちが風邪を引いても休めん!」とのこと。土佐あかうしは生産者の長い時間愛情を持って育てられているのだと痛感します。
土佐あかうしを育てていて一番の喜びの瞬間は
土佐あかうしの生産者として年々高い評価を得ている池地さん。200頭近い牛を二人で世話している苦労は相当なものですが「土佐あかうしを育てていて喜びの瞬間ってどういうときですか?」と聞けば「高い値が付いたり、消費者に評価された時は帰りの車の中で嬉しくてたまらん」との事。消費者に喜んでもらう事は本当に嬉しいそうです。消費者の事を考えながら良質なものを生産する。素敵な事です。
生産者が感じる今後の土佐あかうしの課題とは
池地さんが長年生産者として土佐あかうしに関わってきて感じる現状、今後の課題について語ったのが「後継者問題」「生産量」「価格」といった課題でした。土佐あかうしは数十年前からすると評価が上がってきた点は良いけれど、後継者の予定が無いので次の世代に繋げられるかどうかが気にかかっている様子。生産量も現時点から増やす事は容易ではないのが現状、今稼働している生産者は慣れている作業なので簡単に出来る作業も、未経験だと牧草の取入れだけでもしんどいだろうという事で、後継者問題の解決は容易ではないそうです。現代のきつい労働を嫌がる、週休2日は当たり前、高い給料を稼げる職種に人気が集まる時代にあかうし生産にどうすれば呼び込めるか。今後の土佐あかうしの生産、増産を考えれば、新しい生産者や現存の生産農家の後継者問題も解決していかないといけません。土佐あかうし協会でも後継者問題の解消に注力したいと考えております。
池地さんインタビュー
何年くらい土佐あかうしの飼育を?年間何頭くらい育てていますか?
親父の後を継いで18から。今66。(現在48年) まあ、年間70から80やね。
今一度生産者からみて「土佐あかうし」の特徴ってありますか?
気性がね、大人しい。そういうところが特徴やね。
あかうしの餌はどんなものを?与え方とかは?
配合飼料と牧草。大体10時間くらいあけて与えるようにしゆうね。大体よその人の場合やと大体、餌を与える時間が朝やって夕方にやって、夕方から次に与える朝までの時間が長すぎる。やきうちは朝やってから夜にやったら次は朝早く4時にやるようにしゆう。
餌を与える上で気にしている事は?
肉質というよりも皮下脂肪が付きすぎないように胴心が大きく、バランスがえいように。まあそれがえいか悪いかはわからんけど自分なりに考えてやりゆう。
あかうしを育てる難しさ・気を使う事は?
やっぱり病気やね。風邪、肺炎。女房が繁殖の世話をしゆうときも気を使う。ビタミン切れも。ビタミン切れで餌が食べれんと3日も餌が食べれんかったらスッと痩せる。目に見えてわかる。
飼育環境に関して工夫しているとか気にしている事は?
ハエやね。ハエが多くおったら夜でも牛の足やら体にひっつく。牛がしっぽを振ってハエを逃がそうとしたり、足に止まったら動き回ってイライラして牛が寝れん。それでここの牛舎は太陽光を減らしてハエがこんようにしゆう。この対策をしてからうんと良くなった。
田野町で土佐あかうしを飼育する利点とかありますか?
飼育というより繁殖やね。繁殖にはもってこい。暖かいろ、それから牧草が1年中豊富。自前で良質なものが手に入る。田野町もえけんど、室戸はもっとえい。けんど室戸は風がえらいわね。やき田野が最適。
*インタビューは生産者様の人柄を出来るだけお伝えできるように実際のインタビューの録音に近い形で文字起こしを致しました。
池地さんを訪ねたスタッフは5名。これまで池地さんの牛舎に外部から人を入れた事が無いとの事でしたが歓迎頂き感謝致します。温厚な方でご夫婦揃ってお話のしやすい方でした。若いころの苦労も聞かせて頂き、数十年前は土佐あかうしの良さが市場にうまく伝わっておらず、最近になってようやく知ってくれる消費者が増えて嬉しいとのこと。土佐あかうしは高知県の品種は非常に貴重な純血種。旨味があって尚且つ部位によって赤身から霜降りまで非常に美味しくヘルシーな肉質をしています。時代が土佐あかうしにマッチしたのかもしれません。日頃スーパーや飲食店で食材を買ったり、食べたりするだけだと生産者の顔が見えないものですが、今回土佐あかうしの生産者の熱意、苦労を知ると市場に貴重で良質な土佐あかうしを育ててくれる事に感謝の念を抱きました。池地さんは土佐あかうしの生産者の中でも別格という声が聞かれるほど技術とこだわりを持つ生産者ですがユーモアもあり人としての魅力も感じたひとときでした。多くの生産者さんが育てた牛を評価してもらえることが喜びと語っていますが、池地さんも同じで、生産者さんのやりがいは消費者をはじめ、市場の評価に直結しているのを実感。あかうしの魅力を多くの消費者に知って頂けるよう協会でも努力していきます。