土佐郡土佐町の土佐あかうし生産者「筒井さん」

筒井さんの牧場は、土佐町の山間にありました。牛舎の隣りには田んぼがあり、少し開けた土地です。大きくてきれいな牛舎は、繁殖と肥育のエリアに分かれており、牛たちがゆったりと過ごしていました。

筒井さんは昔、20頭足らずの繁殖農家をされていた親の後を継いで、以来35年間携わってこられました。
現在、飼っている牛は約160頭ほどで、赤牛と黒牛の割合は半々。年間35頭ほどを出荷しています。

筒井様取材の注目点!
  • この道35年のベテラン
  • よく食べてよく寝る環境づくり
  • 経験を重ねて感じる、赤牛の難しさ

▼土佐あかうし協会チャンネル YouTube動画・全編

筒井さん流 牛の育て方

土佐あかうし

長年赤牛を育ててこられた筒井さんに、牛の育成で大事なポイントを3つお話していただきました。

筒井さん流 牛の育成で大事な3つのポイント
  1. 子牛の腹作り
  2. よく食べてよく寝る環境を作ってあげる
  3. みんなで情報交換しながら系統をみる

系統については、「でる系統・いまいちの系統」などをみんなで情報交換しながら見て、いい系統を選んでいるとのこと。
牛に与えるエサや、牛がよく寝られる環境づくりなど、詳しくお伺いしました。

エサについて

黒牛に比べて体重の増えにくい赤牛が大きく育つためには、子牛の時の腹作りが大事と、筒井さんは語られていました。
少し高くはなりますが、栄養豊富な良い草を子牛のうちから食べさせて、たくさん食べられる牛に育てるとのこと。ちなみに良い草は手の届く輸入もので、肥育の段階になると食べさせる稲わらは、地元や市内で確保できたりもしているそうです。

飼料

広くてきれいな牛舎とおがくず

牛舎は筒井さんが昔購入したもので、築30年ほどだそうです。明るくてきれいで、丁寧に清掃されているのが伺えました。
筒井さんは、牛をあまりきつきつで飼いたくはないとのことで、牛たちの区画にはゆとりがありました。

私たちが訪れた際、牛たちのいる区画の足元はおがくずがフカフカに敷き詰められていました。
基本「よく食べてよく寝てもらう」のがいいと筒井さんは考えられており、おがくずもできるだけきれいな状態になるよう換えてあげたいそうです。
しかし、おがくずの価格も昔から比べると3倍ほどになっており、牛舎全部のおがくずを換えたら10万ほどかかってしまうとか。短いペースで換えるのも大変なので、厚めに敷いて長く使うようにしているそうです。

おがくずを換えると、牛たちも嬉しいのか興奮気味に暴れたりすると、筒井さんは笑っていました。
また、筒井さんが聞いた話では、とある研修先の親方が「おがくずの厚みはバラの厚みや」と言ったそうで、牛がよく寝るようにとの教えと受け取っているそうです。

土佐あかうし

35年のベテランが語る、赤牛の難しいところ

筒井さんと土佐あかうし

赤牛について色々とお話をお伺いする中で、長年やっていても赤牛は難しいところがあると筒井さんは語られました。

赤牛は、黒牛に比べて仕上がりにバラつきがでるそうです。
筒井さんの牧場ではA4・A5の牛が育つようにはなったけれども、A2やサシの入っていない牛も時々でてくるそうです。黒牛は安定して大きく育つけれど、赤牛は育ち方に予想できないことがあるそうです。

それでも、筒井さんは最近調子がよくて、7割は目標通りの牛が育てられていると笑みを見せていました。

赤牛の価格について

筒井さんのお話では、赤牛が本当に安くて苦しかった時期もあり、その頃に筒井さんは黒牛も飼い始めたそうです。(平成13年頃、赤牛は1キロ1,500円ほどだったとのこと。)

近年は、ルージュビーフなどの買い支えやブランディングなどもあり、随分と飼いやすくはなったそうです。
筒井さんが思うに、赤牛ももっと改良が進むとバラつきが減って、もっと価値が上がるのではないか、とのことでした。

土佐あかうし

繁殖における、事故と子牛の病気について

筒井さんの牧場では繁殖も行っています。子牛が足りなければ購入してくることもあるそうです。
出産時も万一の事故がないように気を付けているそうですが、子牛の頃に病気などの事故が多いそうで、それについての対策や気を付けていることなどをお伺いしました。

出産時の立会い

出産は、8・9割は自然とできるそうですが、1割ほどが逆子など難産であるケースもでるそうです。(先日は、初めて帝王切開に立ち会ったとか。)
筒井さんは、出産を知らせるセンサーを妊娠している母牛につけ、出産が始まると牛舎に駆けつけるそうです。ご自宅は牛舎から1分ほどの距離だそうですが、冬の夜中などは大変と笑ってらっしゃいました。

ちなみに、妊娠は人工授精で、成功率は3回付けたらほぼ成功しているそうです。

土佐あかうしの母牛と子牛

子牛の病気について

「子牛は風邪や肺炎に弱いので、よく気を付けてみてあげないと」と、筒井さんは話されていました。しかも、風邪や肺炎は同じ区画で流行ってしまうので、早急な対応が必要とのこと。
ちょっと気づくのが遅くなってしまった時は、獣医さんに怒られてしまうこともあるそうです。

現在、筒井さんの牧場での子牛の事故率は、約1割(40頭中4~5頭)とのこと。
事故率のことを考えると、子牛の価格が安ければ購入してきたほうがいいかもしれないと思うこともあるそうです。
牛の体調を知らせるセンサーの導入も考えたそうですが、コストのこともあり踏ん切りがついていないそうです。

筒井さんと土佐あかうし

「観察力あるのみです。」と筒井さんは語られていました。

余談ですが、大人の牛でも尿石など見た目ではわかりにくく危ない病気もあるそうです。

これからの展望、事故ゼロを目指す

筒井さん

これからの展望をお伺いすると、「頭数も増やしたいんですけど、あんまりきつきつで飼うのも嫌やし、現状頭数は現状の維持ぐらいで1年1産さして、事故ゼロにしていくというのが目標ですね」と筒井さんは語られていました。

理想の赤牛についてお聞きすると、「ほどよくサシの入った牛を安定供給できるように」と筒井さんは笑顔で話されていました。

筒井さんへインタビュー!

筒井さんと広報おだち

インタビュアー:広報理事 小田雄介(おだち)

土佐あかうし協会

よろしくお願いします。

筒井さん

はい。

土佐あかうし協会

筒井さん、おいくつですか?今。

筒井さん

ええっとね、56。

土佐あかうし協会

56、何歳からこれに?

筒井さん

21ぐらいかな?

土佐あかうし協会

21から…。やるってなったきっかけはあったんですか?

筒井さん

親がね、20頭ぐらい足らずの繁殖農家を、それこそ子取り農家をやりよったんで、帰ってきて、一貫経営ってやつ。自分とこで産ましたやつを。

土佐あかうし協会

赤牛だけ黒牛だけじゃなくて、半々にしている理由は?

筒井さん

赤牛が全然値がせんかった時もあったんで、その頃に黒牛を入れましたね。それが始まりですね、今のところルージュビーフとか色んな格付けで買い支えもしてくれるので、随分飼いやすくはなったけど。

土佐あかうし協会

どんな赤牛を作ろうっていう風な意識で作ってらっしゃるのかなというのを教えて欲しいです。

筒井さん

そうですね、ほどよくサシの入った牛を安定供給できるように、それを心がけですかね。

土佐あかうし協会

そのためには、どんな要素が大事だなっていう風に感じていらっしゃいますか?

筒井さん

子牛の時の、腹作りとかたくさんの配合飼料を食べれるように作りをして。あとはまあ、よく食べて、よく寝る環境を整えててやること。

土佐あかうし協会

筒井さんが育てられている赤牛のだいたい全体の何パーセントぐらいがご自身のイメージでは到達してるかなっていう風なイメージですか?

筒井さん

7割。今なんかね、ちょっと調子えいです。

土佐あかうし協会

長年やってても、なかなかわかりにくい部分があるんでしょうか?

筒井さん

うーん、エサの内容とかかけ方で何変わってくるようなんで、今の状態を変えんように寄せるように。

土佐あかうし協会

生産で一番困ることとか一番苦労する部分って、どういうところになりますか?

筒井さん

そうですね、事故があること。子牛の時も含めて。気持ち良さそうに寝ゆうなと思ったら死んじゃったりとか、たまにあるんで。
常にこう、観察力を働かして見よらんと。生き物ですのでね。ほんと死なしたら大変なことになるので。

土佐あかうし協会

いや、そうですよね。
やっぱり、特に子牛が事故にというか?

筒井さん

風邪とか肺炎に弱いんで、気をつけちょかんと。

土佐あかうし協会

赤牛をこれから食べてもらうお客さんとか、皆さんに一言。ちょっとメッセージいただけたら嬉しいんですけど、お願いします。

筒井さん

はい。
ストレスのない状況でゆっくり寝てもらって美味しい肉に育てていますんで、たくさん味わって欲しいと思います。

土佐あかうし協会

はい、ありがとうございます。

※インタビューは人柄や空気感を伝えられるよう、できるだけ話し方そのままに近い文章で文字起こしをしております。

インタビュー記事は抜粋内容になります。全編はYouTube動画をぜひご覧ください。

▼土佐あかうし協会チャンネル YouTube動画よりインタビュー抜粋

土佐あかうし協会YouTube動画・全編

編集後記

今回筒井さんから、赤牛の価格が低迷して苦しかった時期や、現在もある赤牛の育て方の難しさなどのお話を聞き、長年赤牛を育ててこられた重みを感じられた気がしました。
取材の中では、特に神経質な性格の牛のことや、初めての帝王切開が大変だったことなど色々なお話もしていただきました。

思い通りにはいかない難しい点は「あるもの」と割り切り、生き物である赤牛と向き合い続けられている、筒井さんの揺るぎない姿勢が印象的でした。